旬感くまもと
室町時代から伝わる繊細で美しい伝統工芸品
熊本県北部に位置する山鹿市。平安時代から温泉郷として知られていたほどの良質の湯・山鹿温泉や、明治43年に建築された国指定重要文化財の芝居小屋「八千代座」など、歴史と文化に彩られたまちです。同市で毎年8月に開催されている「山鹿灯籠まつり」で披露される山鹿灯籠踊りでは、浴衣姿の女性たちが「金灯籠(かなとうろう)」と呼ばれるものを頭に乗せて幻想的な踊りを舞います。
この「金灯籠」は、この地域の伝統工芸品「山鹿灯籠」を代表する様式の一つです。一見、金属のように見える灯籠ですが、実は手漉き和紙と少量の糊だけで作られていて、国指定伝統的工芸品にもなっています。山鹿市ではかつて、和紙の原料である楮(こうぞ)の栽培や紙漉きが盛んで和紙工芸が発展し、室町時代にはすでに今のような灯籠が神事の奉納品として作られていたとされています。山鹿灯籠の内部や柱はすべて空洞で、和紙でできた多数のパーツの組み合わせで精巧な立体感を演出しています。金灯籠の他にも、宮造りや座敷造り、城造りなど、奉納灯籠としてのさまざまな伝統的様式があり、制作には高度な技術と熟練が必要です。


修練を重ね、後世に灯籠を繋ぐ「灯籠師」の存在
山鹿灯籠を制作する職人は「灯籠師」と呼ばれ、現在7名が活動しています。見習い期間だけでも10年はかかると言われ、一人前として認められた者だけが、灯籠師として自分の名前で作品を制作することができます。灯籠師歴13年で、現在、灯籠師組合長を務める田中久美子さんは、「(灯籠師は)伝統を受け継ぐ仲間であり、ライバルでもある」と話します。制作中にくじけそうな時も、他の灯籠師に負けたくないという気持ちを抱きながら精進を重ねています。今後は、「山鹿灯籠の伝統を変えることなく、今の子どもたちに『灯籠師になってみたい』と思われるよう、後世に技を伝えていきたい」と願っています。



制作体験で山鹿灯籠をもっと身近に
これまでに制作された山鹿灯籠の作品などが展示されている山鹿灯籠民芸館では、灯籠師の高度な技術を体験することができます。金灯籠の先端部の「擬宝珠(ぎぼうしゅ)」をモチーフにしたランプづくりで、紙の断面同士を接着する「小口付け」や、平たい紙にヘラや棒などでカーブをつけ立体感を出す「くせ付け」といった技法が体験できます。制作体験キットも販売されているので、お土産に買って帰るのもいいかもしれません。

擬宝珠ランプ造り
料金 | 1,500円 ※別途民芸館の入館料が必要 |
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HP | https://yamaga.site/?page_id=1550 |
お問い合わせ先 | 山鹿灯籠民芸館 0968-43-1152 ※要予約(最大4名まで) |
千人灯籠踊りへの参加も
毎年8月15・16日に開催される「山鹿灯籠まつり」は、深い霧に行く手を阻まれた景行天皇の巡幸を、山鹿の里人が松明を掲げてお迎えしたという言い伝えに由来しています。以来、景行天皇を祀る大宮神社に松明を献上し続け、室町時代に現在の紙製の灯籠へと姿を変え、現在の山鹿灯籠踊りに受け継がれています。
祭りの呼び物「千人灯籠踊り」は、約千人もの女性が「よへほ節」にのせて優美に踊り、幾重にも重なる幻想的な灯りが揺らめく光景は、見る人の心を魅了します。山鹿市では、まつり当日に千人灯籠踊りに参加できる一般参加者も募集しています。県外在住者の応募も可能ですが、事前に行われる練習への参加など、一定の条件があるので、「我こそは!」という女性は、ぜひチャレンジしてみてください。まずは、その幻想的な踊りと、精巧な灯籠を間近で見るだけでも、山鹿に足を運んでみる価値はありますよ!


千人灯籠踊り踊り手募集
問い合わせ先 | 山鹿灯籠まつり実行委員会事務局(山鹿市観光課内) 0968-43-1579(平日8:30~17:00) ※電話での申し込みは受け付けていません ※本記事の掲載時点で2025年の募集期間が終了している可能性があります(募集期間内であっても定員に達した場合は申し込みを終了することがあります) |
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HP | https://yamaga-tanbou.jp |