【新・旬感くまもと/荒尾市・のあそびlabo】一軒のリノベーションから始まった駅前の再生が“点”から“面”へー荒尾市

オープンハウス
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旬感くまもと

住みやすいスマートタウンを目指す一方で人口減少や高齢化などの課題も…

熊本県北西部に位置し、福岡県大牟田市に隣接する荒尾市。福岡・熊本両都市圏へのアクセスがしやすい上に、コンパクトな都市機能と自然環境とがほどよく調和している住みやすい居住環境が魅力です。

さらに、荒尾競馬場跡地を含む約35ha(東京ドーム約7.5個分)には、「あらお海陽スマートタウン計画」が進行中で、敷地内には戸建て・集合住宅や公園、道の駅、保健・福祉・子育て支援などの複合施設の整備が進んでいます。

一方、世界文化遺産「万田坑」に代表されるように、かつては炭鉱の街として栄えた荒尾市ですが、人口は1985年の6.2万人をピークに徐々に減少し、現在は約5万人です。今後も減少が続くと予想されているのに加え、人口に占める高齢者の割合も3割を超えています。また、市内には空き家や空き店舗が増え、以前のようなにぎわいが失われている場所も少なくありません。そうした場所の一つである荒尾駅前で、にぎわい復活の拠点となっているのが「のあそびlodge」です。

オープンハウス
荒尾駅前のにぎわいづくりの出発点となった「のあそびlodge」。2021年4月にプレオープン(写真提供:のあそびlabo)
明治日本の産業革命遺産の構成遺産の一つである万田坑
「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つとして2015年に世界遺産に登録された万田坑。当時の建物や機械を今も見ることができます
2026年6月の完成を目指す「あらお海陽スマートタウン」
人がつながり幸せをつくる快適未来都市をテーマにした「あらお海陽スマートタウン」は、2026年6月の完成を目指し整備が進んでいます

■万田坑

登山仲間で始めた活動が徐々に“まちづくり”へと発展

のあそびlodgeを運営しているのは「一般社団法人のあそびlabo」。2020年4月に、代表の中村光成さんをはじめとするアウトドア好きや登山仲間が、“野遊び”の楽しさを伝えることを目的に設立しました。その活動拠点として、荒尾駅から徒歩1分の場所にある廃業したビジネスホテルを再生させることになりました。

とはいえ改装に必要な資金が簡単に調達できるわけではないため、DIYに長けたメンバーの指導を仰ぎながら、一部屋ずつリノベーションしていくことに。「団体設立からの1年は、ほぼDIY作業に費やしました。自分たちも楽しみながら、さらにワークショップ形式で多くの人たちに参加してもらったことが、のあそびlaboの活動を知ってもらい、活動の輪を広げることにもつながりました」と話す中村さん。

1年後に1階のカフェ、2階の客室が完成し、宿泊施設としてオープン。その後、荒尾市の協力を得ながら助成金を活用した駅前広場でのマルシェ開催を手掛け、今では来場者が1,000人を超えるなど、荒尾駅前のにぎわいづくりに貢献しています。中村さんは「コロナ禍でも焦らずに、組織運営やクリエイティブな活動をブラッシュアップできたことが良かった」と、当時を振り返ります。

のあそびlodge1階「のあそびキッチン」
のあそびlodge1階「のあそびキッチン」は、ビストロ&カフェのシェアキッチンとして営業しています(営業日要確認)
一般社団法人のあそびlabo代表中村さん
穏やかなお話ぶりが印象的な中村さん。本業の医師の傍ら、地域のにぎわいづくりに注力しています
のあそびlodge客室
2階の客室は7室。DIYでそれぞれに違う仕様に仕上がっています。写真は山小屋風のツインルーム
荒尾駅前のロータリーと広場で開催された「のあそびマルシェ」
荒尾駅前のロータリーと広場で開催された「のあそびマルシェ」。回を重ねるごとに規模も拡大しています(写真提供:のあそびlabo)

参加型のリノベーションを実施し、多くの市民が街への愛着を共有

2023年には、荒尾駅舎を運営するJR九州から相談を受け、駅舎内の遊休スペースの活用を手掛けることになりました。地域の食材や食文化を国内外に発信している福岡のアンドローカルズとの共同プロジェクトで、2024年11月に「あらおリビング」をオープン。「尊い生産と食卓をつなぐ」をコンセプトに、九州各地の美味しくて体が喜ぶ食材を、日々の食卓へ届けるカフェ&グローサリーショップは、オープンから1年未満ながら、すでに駅前ににぎわいをつくりつつあります。

のあそびlaboでは、今後も荒尾市などと連携しながら、元信用金庫だった建物をコワーキングスペースにリノベーションする計画や、荒尾駅前広場の改修計画にも関わっていく予定です。さらに中村さんは、将来的なまちづくり・にぎわいづくりを見据え、「荒尾の街にはまだまだ可能性を秘めた“空き家”が点在しています。リノベーションのワークショップ開催などを通じて、街への愛着を多くの人たちと共有できれば」と意気込みます。

空き家や空き店舗をリノベーションして生まれた小さな店がにぎわいを創出し、それをきっかけに客や店のオーナーとして若い世代が足を運ぶようになり、活気が次の世代へと受け継がれていく。そんな点から徐々に線、そして面へと広がっていくまちづくりが、荒尾市で少しずつ実を結ぼうとしています。

荒尾駅舎内の「あらおリビング」
荒尾駅舎内の「あらおリビング」。駅利用者以外でも気軽に立ち寄れる街の交流スペースとして人気です(写真提供:のあそびlabo)
特産の荒尾梨の幹を再利用し、ワークショップで制作した店内のテーブル
店内のテーブルは、特産の荒尾梨の幹を再利用し、ワークショップで制作したもの。内装もほぼセルフリノベーションで仕上げた手作り感が魅力です
シェアキッチン「大石たばこ店」
駅前の閉店したたばこ店を半年かけてリノベーションし、シェアキッチン「大石たばこ店」として再スタート。リノベーションの作業には、延べ200人の市民が参加しました(写真提供:のあそびlabo)
のあそびlaboが思い描く「荒尾駅前空想絵図」
のあそびlaboが思い描く「荒尾駅前空想絵図」。駅周辺が、さまざまな世代が楽しめ、思わず歩き回りたくなる緑あふれる空間として描かれています

■のあそびlabo

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