旬感くまもと
産地を名乗ることを許された希少な焼酎
「焼酎」という言葉が登場する最も古い資料は、1559(永禄2)年、鹿児島県伊佐市にある郡山八幡神社の修繕時、宮大工が「施主がケチで一度も焼酎を振る舞ってくれなかった」と木札に書き残した落書きだと伝えられています。当時、一帯は相良藩の領地であり、蒸留技術は東南アジアや大陸との交易を通じて早くから人吉・球磨地域に伝わっていたと考えられています。この地で造られる「球磨焼酎」には明確な定義があり、「原料は国産米のみであること」「人吉・球磨地域の地下水を使って仕込んでいること」「人吉・球磨地域内で蒸留・瓶詰めされていること」という条件を満たしたものだけが名乗ることを許されます。
1995年には、ボルドーワインやスコッチウイスキーなどと同様、産地が品質を保証する国際的ブランドとして農林水産省のGI認定(地理的表示)を受けました。現在、人吉・球磨地域内では、厳しい定義を守る27の蔵元が焼酎造りの伝統を継承しています。


500年続く歴史を伝える“焼酎の博物館”
人吉・球磨地域で長年受け継がれてきた焼酎造りの文化を知ることができる施設が、人吉市にある球磨焼酎ミュージアム「白岳伝承蔵」です。同地域の27の蔵元の一つ、高橋酒造の製品倉庫だった建物を再生し、球磨焼酎の歴史と価値を伝える発信拠点として2010年に開館しました。館内では、洗米から蒸留までの伝統的な製造工程を、実際の道具やパネル展示で分かりやすく紹介。焼酎のルーツや、人々の暮らしに根付いてきた歴史を学ぶことができます。また、併設の物販・試飲コーナーでは、27蔵元すべての焼酎が購入可能なほか、高橋酒造商品の無料試飲もあり、それぞれの味わいの違いを楽しめます。
また、人吉・球磨地域では、2020年に発生した「令和2年7月豪雨」で被災した蔵元も少なくありません。その際には「白岳伝承蔵」内に災害対策室を設置し、地域の復興と球磨焼酎業界の再建に向けた多角的な支援を実施しました。「多くの義援金や購入で応援していただき、被災した蔵元の設備復旧や再建に役立てることができました」と当時を振り返る、高橋酒造お客様創造本部長の久保田一博さん。




焼酎粕の再利用から始まる循環型事業
人吉・球磨地域の蔵元では、地域の焼酎作りの文化を守り伝えるだけでなく、SDGsに繋がる事業にもいち早く取り組んでいます。2004年には、焼酎の製造過程で発生する「焼酎粕」を動物用飼料や肥料へ再利用するため、14の蔵元などが出資して球磨焼酎リサイクリーン株式会社を設立。現在、20蔵元の焼酎粕の処理・再利用を行っています。
再利用の取り組みの一つは、熊本県菊池市の廃校を活用して設立した「人工光型植物工場」の研究拠点です。ここでは、焼酎粕を餌としてアメリカミズアブという昆虫を育て、それを飼料化してエビの養殖を行っています。さらに、養殖で使用した水でイチゴを栽培するという持続可能な循環型農業システムです。また、この廃校では地元・熊本の崇城大学発のベンチャー企業「株式会社Ciamo(シアモ)」も、焼酎粕を使った光合成細菌の培養キット「くまレッド」の研究開発を行っています。光合成細菌には水質浄化や土壌改善などの効果があり、焼酎粕を原料にすることで従来は高価だったものが低コストで生産可能になりました。
500年近く続く伝統を守りながら、そこに新たな循環や価値を生み出す取り組みを通じて、「球磨焼酎」という人吉・球磨地域独自の文化は、これからも多くの人に愛され続けることでしょう。



問い合わせ先
球磨焼酎ミュージアム「白岳伝承蔵」
| 所在地 | 熊本県人吉市合ノ原町461-7 |
|---|---|
| 営業時間 | 9:00~16:00(15:30受付締切) ※年末年始は休館 |
| 入場料 | 無料 |
| TEL | 0966-32-9750 |
| URL | https://www.denshogura.jp |




