【くまもとテーマ便×教育・子育て】 時代と共に進化を続ける学びの場

マンガを学ぶ高森高校マンガ学科の生徒の手元
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くまもとテーマ便×教育・子育て

個性的なカリキュラムで「選ばれる」学校に

少子化の波は、熊本の教育現場にも押し寄せています。「県立高等学校あり方検討会」によると、2025年度県立高校の計274学級のうち約60学級分が定員割れとなり、34年度には110学級分まで拡大すると見込まれています。熊本市外の学校は顕著で、7割弱の学校が定員割れを起こしているというデータもあります。

一方、学生に「選ばれる」ために独自の進化を遂げる学校も現れ始めました。公立高校で全国初の「マンガ学科」を新設した熊本県立高森高等学校をはじめ、時流に合わせた個性的なカリキュラムを導入した県内の学校をご紹介します。

公立高校として全国初のマンガ学科を新設した高森高校の校舎
全校生徒数221名と小規模ながら、県外からの進学希望者も多い高森高校。令和8年度には実習室やPC室を備えたマンガ学科新校舎棟が誕生予定です

プロのマンガ家・編集者が先生!? 公立高校で全国初の「マンガ学科」

奥阿蘇の自然に囲まれた高森高校。23年度に公立高校としては全国初となるマンガ学科を新設したことで県内外から注目を集めています。

「マンガに関する専門的な知識や技法を学べることが強みです」と話すのは、同校の加藤教頭。マンガ制作、マンガ概論といった専門科目を1学年約40人の生徒が学んでいます。

マンガ出版社(株)コアミックスの支援のもと、マンガ家・編集者が技法を直接教えてくれることも魅力。同社社長で元週刊少年ジャンプ編集長の堀江信彦さんや『キャプテン翼』作者の高橋陽一さんなどが特別講師として登壇することもあります。

過疎化の影響で定員割れが続き、入学者数が定員の25%まで落ちたことも。しかし、マンガ学科を新設してから、普通科も同様に定員を満たすほど入学者が増え、25年度のマンガ学科前期選抜試験の倍率は4.18倍まで上昇しました。

北は栃木から南は沖縄まで、同学科の約4人に1人が県外の学生で、その多くは高森町やコアミックスからの支援を受け学生寮や下宿を利用しています。オープンスクールも県外からの参加が多く、町が宿泊費や交通費を補助する「下宿体験」も行われました。

「マンガ学科は今年初めて全学年がそろいました。マンガ家や編集者を目指す学生、美術系大学でスキルを磨きたい学生など進路はさまざまですが、生徒の夢を実現できるよう支えていきたいです」と加藤教頭は思いを語ります。

マンガ学科の授業の様子。マンガ家の富沢順先生が講師を務め、ペンを持つ手元を画面に映している
マンガ家・富沢順先生による授業の様子。実演を交えながらキャラクター作りの方法をレクチャー
真剣にマンガを学ぶ生徒たち。机には多数のペンが入った筆箱などが見える
この日は富沢先生が描いたストーリーの中に、生徒自身が考えたキャラクターを登場させ、作画する授業が行われていました
それぞれが描いた漫画を持つ二人の生徒
マンガ学科1年の、畑さん(写真左)と林さん(写真右)。「先生がみんな面白くてフレンドリーです(畑さん)」、「好きなことが一緒の友達がいて、堂々とマンガを描ける環境があることがうれしいです(林さん)」
フィギュアも並ぶ教室で写真に収まる教頭と担任
高森高校教頭の加藤先生(写真左)と、マンガ学科1年生担任の直江先生(写真右)。プロ仕様のデジタル機材(PC、ペンタブレット)が導入されているのも同学科の特徴です
阿蘇五岳の根子岳が見える写真。奥に見える根子岳や山々に向かって、真っすぐの道路が伸びている
阿蘇五岳のひとつ、根子岳を望む高森町。豊かな自然に触れながら、マンガ制作に励むことができる点も高森高校ならではの魅力です

TSMC進出や国際化を背景に、多様なカリキュラムが新設

特徴的な学科を新設した学校はほかにも。TSMCの進出に伴い、技術者の育成を目的に熊本県立水俣高等学校と開新高等学校が半導体分野に特化したカリキュラムを導入しました。

水俣高校は25年度に「半導体情報科」を新設。授業を通して半導体の基礎知識を身につけるほか、企業見学などで現場の技術を学べる機会を提供しています。

開新高校の「半導体工学科」も同様に、大学や企業による実践的な学びを重視。国際化に対応するため技術英語の学習にも力を入れています。

高校にとどまらず、小学校でも新たな教育への取り組みは始まっています。

九州ルーテル学院では、外国人材の来熊を背景にインターナショナルスクール小学部を開校。上級学年の転入生を含めて約60人の児童(うち外国籍約15人)が英語を使用言語とし、国際バカロレアの探究カリキュラムに取り組んでいます。

加えて、熊本大学教育学部附属小学校ではグローバル人材の育成を目的に26年度から「国際クラス」をスタート。日本の学習指導要領に沿って多くの授業を英語で行うイマージョン教育を行います。一般クラスとの交流を通して学校全体の国際化も進めていく予定です。

アスカインデックスの社員が見守る中、機器を使った半導体の授業に取り組む水俣高校の生徒たち
水俣高校で半導体に関する授業支援を行うアスカインデックスによる実習の様子
半導体の素材が並ぶ教室で話を聞く開新高校の生徒たち
開新高校の企業実習の様子。就職や進学に必要な資格の取得も積極的に行っています
六角形の机で授業を受ける生徒たちを上から移した写真
九州ルーテル学院インターナショナルスクール小学部の授業風景。多文化の子どもたちが互いに学び合い、主体的に英語で意見を交わしながら課題に取り組んでいます
国際棟の完成イメージイラスト
熊本大学教育学部附属学校の敷地内に建設中の、鉄筋3階建ての「国際棟」のイメージ。言語面はもちろん、日本の教育の良さを生かしつつグローバルマインドを育成できる点が国際クラスの魅力です
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