ラブくま通信 1/16号

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旬感くまもと

熊本県と大分県の県境に位置し、30軒の宿が集まる黒川温泉郷
戦前までは湯治客が訪れる療養温泉地だった黒川温泉

山奥の秘境が全国屈指の人気温泉地へ

熊本県と大分県の県境に位置し、30軒の宿が集まる黒川温泉郷。熊本駅からは公共交通機関で約3時間、熊本空港からも車で1時間半ほどかかる奥地にも関わらず、全国や海外からも多くの人が集まる人気の温泉地となっています。

戦前までは湯治客が訪れる療養温泉地だった黒川温泉。宿主も農林業を営みながら半農半営が中心でしたが、1960年代に九州横断道路(やまなみハイウェイ)の建設が始まり、旅館の専業化が進みます。1964年に九州横断道路の全面開通時には観光客が増えたものの、3年足らずでその効果は終了。阿蘇や杖立、別府など周辺の温泉地へ客足は流れ、黒川温泉は低迷期に入りました。

阿蘇や杖立、別府など周辺の温泉地へ客足は流れ、黒川温泉は低迷期に入りました

転換期が訪れたのが1970年代中頃。地元を離れていた二代目、三代目のUターンや、婿入りで30代の若者が黒川に集まります。彼らは都会で得た知識や経験を元に、新たな黒川温泉の姿を模索。旅館組合の組織改革を行い、黒川全体の景観づくりに取り組みました。まずは旅館ごとにバラバラに掲示されていた看板をすべて撤去し、統一共同看板を設置。整備されていないスギ山の剪定や植樹を行うことで趣のある景観づくりを進め、協力し合いながら黒川温泉の代名詞でもある趣向に富んだ露天風呂の形成を行いました。そして、1枚につき黒川温泉の露天風呂の中から、3か所の温泉を選んで入ることができる「入湯手形」を発案。全国でも類を見なかった取り組みは大きな話題となり、黒川温泉の名を知らしめるきっかけとなりました。宿泊者数は1999年には年間30万人に、ピーク時の2003年には40万人、推定入込客数は120万人を記録。「一軒で儲かるのではなく、地域全体で黒川温泉郷を盛り上げたい」「すべての旅館がともに磨きあう」との思いを表す『黒川温泉一旅館』というキャッチフレーズが生まれたのもその頃です。

サスティナブルな活動で黒川の未来を守る

旅館から出る生ゴミに落ち葉、もみ殻、米ぬか、赤土等を混ぜ合わせて完熟堆肥にし、地元の農家に提供
堆肥を活かして作ったトマト100%を使用したクラフトジュース「yoin(ヨイン)」を数量限定販売

2020年から組合が新たに取り組み始めたのが堆肥事業です。旅館から出る生ゴミに落ち葉、もみ殻、米ぬか、赤土等を混ぜ合わせて完熟堆肥にし、地元の農家に提供。採れた美味しい野菜を旅館でお客様に提供するという実証実験中です。「黒川温泉は地熱や水、草原、森林など自然の恩恵をいただくことで成り立っています。自然環境を守るには、環境負荷を抑えながら経済活動を成り立たせていくことが必要です」と話すのは、黒川温泉観光旅館協同組合の北山さん。さらに昨年は新たな展開として、堆肥を活かして作ったトマト100%を使用したクラフトジュース「yoin(ヨイン)」を数量限定販売(既に完売)。黒川温泉のすぐ近くにある井野農菜園のトマトのみを使用したこのジュースは、「フレッシュトマトをそのまま食べているよう」「酸味と甘みのバランスが良くさっぱりしていて飲みやすい」と評判を呼びました。次の商品展開も企画中とのことで待ち遠しいですね。

幻想的な湯あかりを期間限定で開催中

2012年から始まった「湯あかり」は、温泉街の川端通り沿いを流れる「田の原川」などに球体状の「鞠灯篭」や筒状の「筒灯篭」を設置し、寒さ厳しい黒川の冬を温かく演出する冬季限定のイベントです。湯あかりのシンボルである鞠灯篭は、放置竹林による竹害対策で伐採した竹を活用し、地元の人が組み立てて作ったもの。黒川温泉郷のおもてなしの気持ちが灯りとなり、訪れる人を優しく包んでくれます。

湯あかり
開催期間:2023年12月23日(土)〜2024年3月31日(日)
開催時間:17:00〜21:30(毎日)
お問い合わせ先:黒川温泉観光旅館協同組合0967-44-0076 (受付時間 9:00-17:00)

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