地域活性化のために奮闘する天草唯一の焼酎蔵
美しい海に囲まれた熊本県南西部の天草諸島。その一つ、天草下島(しもしま)にある天草市には、東シナ海に沈む夕陽が美しい天草西海岸の絶景や、豊かな海が育む新鮮な魚介類、そして世界文化遺産に登録された「﨑津教会」など、訪れる人を魅了するスポットが各所に点在しています。ただ、熊本市などからのアクセスが比較的良好な上天草エリアに比べ、観光客の集客面ではやや遅れをとっています。

そんな天草下島の東海岸、同市新和町にあるのが「天草酒造」です。130年の歴史を誇る天草地域で唯一の焼酎蔵として、代々伝わる伝統の技を守り続けています。豊かな香りと深いコクが生まれる常圧蒸留を行っていて、麹づくりも職人の手作業です。また、地元・天草産の芋や米をはじめとする地域の素材を積極的に使用するなど、単に焼酎づくりを行うだけでなく、「天草のためになるかどうか」という指針の下で地域の活性化にもひと役買っています。


天草の発展なしに天草酒造の発展もない
江戸時代、天草島内には40近い酒蔵があり、それぞれの集落で芋焼酎が作られ、そのほとんどが島内で消費されていたといいます。しかし、時代の流れとともに減少し、50年前には天草酒造が島内唯一の蔵元に…。一時は焼酎造りだけでは生活できないほどの苦境にも立たされました。
現在は、4代目となる平下豊さんが切り盛りする同酒造。さまざまな困難もありながら、130年にわたって天草で焼酎づくりを行ってきたからこそ、「天草地域の発展なしに、天草酒造の発展はありえない」というスローガンにも重みがあります。

そうした思いを形にするため、効率重視の時代に逆行するような全量手作りの蔵を新設。2006年に創業時からの銘柄「池の露」を26年ぶりに復活させるなど、新たな挑戦を続けています。その一つが、2021年に酒蔵に隣接する場所にオープンした「KANPAI AMAKUSA(カンパイアマクサ)」です。製造している焼酎や天草地域の特産品販売を行うのはもちろん、カフェでランチを提供するなど、地域の魅力の発信拠点にもなっています。


地域の第一次産業を支えるハブへ
また天草酒造では、自社での取り組みだけでなく、地域を巻き込んだ活性化も行っています。それが、2009年から平下さんが中心となり、「新和地区を元気にしたい、未来へつなげたい」という熱い思いを形にしたイベント「新和de KANPAI」です。同イベントは、回を重ねるごとに口コミやSNSで評判が広がり、今や島内外から多くの人が訪れる天草の春の風物詩に。「カンパイアマクサ」のオープン以降は、同所がイベント会場としても使われています。

一方で、2020年以降、コロナ禍による飲食店の休業に伴う原料のサツマイモの生産量低下に加え、サツマイモが地中で腐る「サツマイモ基腐病」が全国に広がるダブルパンチで、仕入れが危機的状況に陥りました。そうした中、「それなら自分たちで芋を作るしかない」という声が社員から上がり、地域の耕作放棄地を活用したサツマイモの自社栽培を開始。「自分たちの手で米や芋を育てるようになり、『焼酎づくりは農業の延長線上にある』との思いを強くしました」と語る平下さん。

交流施設やイベントを通じた地域活性化だけでなく、天草地域の持続的な発展を見据え、棚田の復活や、車海老やみかん、天草大王といった特産物の生産者たちとチームを組んで第一次産業の底上げを図るなど、地域のハブ役としての役割も担っている天草酒造。100年以上続く伝統ある蔵元のチャレンジから、新たな地方創生の息吹が聞こえきます。

問い合わせ先
KANPAI AMAKUSA天草酒造
| 所在地 | 熊本県天草市新和町小宮地11808 |
|---|---|
| 営業時間 | 平日 11:00〜16:00/土日祝 11:00〜16:00 |
| 休み | 毎週水曜 ※ただし、営業日は仕込みや天候等、状況により変わる場合があります。 |
| TEL | 0969-46-2013 |
| URL | https://ikenotsuyu.com/kanpaiamakusa/ |




